センセ Part10
センセ こっち向いて
センセ ありがとう
東京の大学に とうとう受かって
私はあさって この町を出る
そして
学校の前まで行く用事が
うまい具合に転がり込む
新学期の準備で忙しいセンセ
無理させるのはわかってたけど
最後だから
言わずにサヨナラ 出来ないから
無理させて 2人きりになった
昼の 物理実験室
他愛ない会話を30分
言わなきゃ 言わなきゃ そう思うのに
気がつけば センセのタイムリミット
ついてたストーブをセンセが消して
振り向いた瞬間
臆病者の私が
口を 開いた
何度も何度も練習して
考えた台詞も
本番は簡単に言えるわけなくて
「 2年前からずっと好きでしたよ 」
その次が続かない
え〜とかう〜とか変な言葉
彼女にしてください
それを言うだけなのに
言えない
センセ わかってるのに先を聞く
ああ 最後までこうやっていじめて
「 私じゃ だめですかね? 」
予定とは違うけれど
搾り出した台詞
なのに 何が? とか言うし
さすが こんなときにまで笑いをとるかっ
・・・そんなセンセだから 好きなんだけど
「 私なりに 本気ですから 」
だから 答えて
さすがにそこまで来たら
いじめすぎたな
少し笑ったあと センセは 答えた
「 ごめん、・・・としか言えない 」
いつもの通り
はっきりした声
「 お前を嫌いなわけやないけど
付き合いたいとかいう気持ちは ない 」
私 下向いて 笑って 頷く
「 半分は お前を生徒としか見てこなかったから、と思うけど 」
センセの顔 見れない
「 これから先 これ以上好きになるかっていうと
お前が離れてしまうわけやし・・・ ないと思う 」
そう
私は
あのとき確かに
夢と恋で迷って
夢を選んだ
夢を選んだんだ
気持ちは 本当に 嬉しかった
また 遊びに来い
悔しいよ
何がって
前を向いていられそうなことが
確かに 今は
涙で何も見えないけれど
きっと私は歩けてしまう
どうして 最高のふられかたをしたんだろう
どうして 最後までこんなに優しいんだろう
センセを好きになれてよかった なんて
漫画みたいなこと 思えるのが悔しい
いつか後悔させてやる と思うけれど
本当はそんなことどうでもいいぐらい 温かい
私 泣き虫だけど
センセの前では 泣かなかったよ
笑って 別れたよ
だって
あなたの前では 笑顔でいたかったから
センセ ありがとう
2年間ずっとありがとう
きっとあなたを忘れることは出来ないけれど
もう少しだけ泣いたら
でも私は前向いて歩いていく
こんな気持ちを ありがとう
最後まで優しくて ありがとう
あなたに出会えてよかった
あなたを好きになれてよかった
あなたに伝えてよかった
私の高校2年間を捧げたのが あなたでよかった
センセ こっち向いて
センセ 大好きだよ
センセ こっち向いて
センセ 大好きだよ・・・
さよなら
|
|