神様どうか
さよなら。
心の中でその言葉を呟いて、
あたしは東京にひとりで出てきた。
高校時代の全てを捧げた人に背を向けて、
たったひとりで。
大学生になった。
ちょっと憧れてた独り暮らしも始めた。
でも。
何でもいい、あたしに出来ることなら何でもするから、
神様どうか、ときを戻して。
あの人とただ笑い合えてた、 幸せな高校時代に。
ごめんなさい。
そう言わなければいけないのはあたしなのに、
あのときずっとあの人は謝ってた。
あたしが困らせてるのに、
顔も上げずにずっとずっと謝ってた。
ずっと笑顔でいてくれ。
それはあの人が唯一あたしにした頼み事。
でも。
ごめんなさい、あたしは今はただ枕に顔を押し付けてる。
神様どうか、ときを進めて。
あの人のことを忘れて、 新しい仲間と笑えるように。
すきです。
言わなければよかったのかも知れない。
そうすれば何も始まらない代わりに何も終わらなかった。
あたしとあの人の関係は、ゆるゆると続くはずだった。
一目でいい、会いたい。
二度と会えなくしたのはあたしなのに。
まだ。
くるしくて、
ことあるごとにあの人を思い出して涙が出てくる。
神様どうか、とにかく「今」から脱出させて。
ときを戻してくれたっていい、進めてくれたっていい。
そしたらきっと、あたしはいつも通り笑えるから。
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