雪が降れば
ひんやりとした空気が
僕を包む
それは死にすらも似た静寂
冬の朝
雪が降ればいいのに
彼女がいつも言っていた台詞
寒いじゃないか
僕があるときそう言うと
彼女は小さく笑って
それ以来 言わなくなった
雪が降ればいいのに
ある日 ふと そう思って
彼女の心に気づく
もうあのとき
彼女の心は僕の側になかったのだと
ただ 彼女の優しさで
僕の側にいてくれていたのだと
雪が降れば
真っ白な雪が降れば
全部 覆い隠してくれるのに
疑念も 後悔も 孤独も 悲しみも
痛みも 苦しみも 涙も 愛も
今日も雪は降らない
真っ直ぐな日差しが
街に降り注ぐ
ひとりで歩く僕に降り注ぐ
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