呼びかける声を求めている。

それでも何も起きない現実に、疲れていた。

街が12月24日という特別な日を迎えて色づく中、

俺はひとりで彼女を見上げていた。



俺の願いなど叶うはずはないとわかっている。

でも、それでも―――――。

 
 
 
 
 
願わずにはいられない、特別な日だから。 
 
ポツン…ポツン、と雨が降っていた。

「ねぇ。」

声がする。

「外、行かない?」

俺は頷くと立ち上がる。

「雨…だね。」

少し残念そうに呟くその声。

「雪になればいいのに。」

―――――雪。

その音に、身体の何処かが反応する。

雪…?

「手、出して?」

暗闇の中の光。

「ほら、こんなに冷たい。」

ぎゅっと掴まれる感覚。

「駄目だよ、暖かくしてなきゃ。」

呆れたように、けれど温かいその声。





「ね、………はるか。」











その声に、目が覚めた。

部屋を見回しても、いるのは……

動かなくなってしまった、俺の大切な人だけ。

彼女の入っている容器にそっと手を触れる

…冷たい。



「なぁ。」

呼びかけた。

「外、行かないか?」

ピクリとも動かない。

「今は雨が降ってるけど。」

その白い肌がさらに白くなる前に。

「――きっと、もうすぐ雪になるから。」

お前の大好きな、雪が降るから。



色褪せない記憶。

変わらない姿。

だけど。





…抱き締めても彼女からの返事はない。



たとえ今日が特別な日でも。

奇跡など起こらない。





それでも――……。











願わずにはいられない、特別な日だから。







―――――ゆき…。





外の雨は、雪になっていた。


 
 
 
2004.12.05.UP
「VAIO」番外編その2。本編が始まる前のクリスマスの話。
あ〜〜〜切なくなったー。ごめん悠ぁ〜。

 
 




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