5私の本当の体
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「兄さん・・・」
私が車に轢かれてからどれぐらいの時が経ったんだろう?
まだ朝だったはずなのに、窓の外は暗い。
「哀・・・よかった・・・」
兄さんが心底安心したような声を出す。
でも、私は素直にもう喜べない。
あの夢は・・・現実だ・・・。
「兄さん・・・1個聞きたいことがあるの。」
「何だ?」
「私・・・兄さんが好きだよ。」
「俺もだよ。哀は誰も適うことの無い・・・たった一人の妹だよ。」
「違う!!!愛してるんだよ!!!」
私がてっきりもう兄さんは知ってるのものとして喋ったのに、兄さんは驚愕の表情をした。
「哀!?」
・・・・・・・・・・?
「え、何で驚くの?さっき気付いたんじゃ・・・」
「え゛え゛え゛え゛?・・・いつ?」
「・・・・・・・・うそ。」
や・・・本当にッ!?
私、一人で勘違いして・・・こんな・・・
「気付いてなかったのッ!?」
「いつ気づくんだよ???」
「私が・・・朝・・・学校じゃなくて家で付き合う方がやだって言っちゃったじゃん・・・」
「あぁ!!!・・・あれ、そういう意味だったのか?」
もう、何も言えないデス・・・。
兄さんの鈍感さを甘く見てました。
「もう、いいです・・・。ま、とりあえず私は兄さんが好きなの。」
「・・・・・」
「でも、ね。これって・・・
この想いって・・・創られた想いなの?」
「そ・・・れは・・・」
「私は『クローン』の体だから、この想いがあるの・・・?」
「哀!?・・・そんなこと無い、お前はお前だ。」
「ごめん、兄さん。私、わかってるの。」
「哀・・・」
「ねぇ、この想いは創られた物なの?」
「・・・・・」
「何で、兄さんは私のクローンに兄さんへの愛を植え付けたの?」
「・・・違う。」
「え?」
「哀のクローンじゃない。」
「・・・どうゆうこと?」
「―――――俺の愛した女(ひと)だ。」
私の存在は一体何だったんだろう。
私は、てっきり、私のクローンに私の自我を植え付けたのかと思ってた。
違った。
私は・・・私のこの体は私のものじゃない。
兄さんの恋人。
兄さんの死んだ恋人。
兄さんの交通事故で死んだ恋人。
脳死・・・話には聞いたことあるけど、こんなに重く実感したのは初めてだった。
兄さんはクローンも作っていた。
だけど、そのクローンは、脳の部分だけ、兄さんの恋人に移植された。
それが・・・私が“見た”クローンだった。
何も記憶の無いはずのクローン・・・何時の間にか兄さんへの愛があった。
驚いた。
たとえ、脳を取り替えても・・・「愛」はそこに残るのか。
それから兄さんの研究は始まった。
研究の最中、私が生まれた。
そして・・・あの事故に私があった。
年齢としては、10も違う、6歳の私を・・・16歳の恋人の体に移植した。
それから・・・私に、違う記憶を植え付けた。
「小学校に行った」という間違った記憶。
中学校から初めて学校にいったはずなのに、私の脳裏にはそんなこと、なかった。
今思ってみれば、確かに小学校の記憶・・・矛盾しているところがある。
昴だけは・・・私が小学生の時から一緒に遊んでいた。
私の体は16歳で、必要以上に大きいから・・・外に出させてもらえなかった。
兄さんは、私の行動から、流石に自我が確立した人間の脳を移植したんじゃ、
愛は消えてしまったのかと思っていたらしい。
でも、まだ。
でも・・・まだ残っている。
たとえこの気持ちが嘘でも。
私にとっては・・・まだ真実。
『貴方の中にいつでも私はいるのよ―――――』
えっ?
知らない人の声が聞こえた。
兄さんからその真実を聞かされた夜。
寝ようと思って電気を消したら・・・
知らない人の声が聞こえた。
なに?誰なの?
まさか・・・
でも、それっきりその声は聞こえなかった。
「如月・・・」
昴?昴だ。これは、また私の記憶?
今度は何を思い出すの?
・・・何も、もう何も思い出したくないのに。
「哀ちゃん・・・」
どんどん幼い記憶に戻っていく。
何も思い出したくないの!もう・・・もうやめてよ・・・
「哀ちゃん、何でそんなに大きいの?」
いや、いや・・・・・
「哀ちゃん、何で、大きくならないの?」
いやぁっ・・・・・・・・・
まさか・・・私の体は成長していないの?
6歳の時に16歳の体になった。
でも・・・それからもう9年近く。
私の体はまだ16歳のまま。
嫌。
これから私はどうなるの?
助けて。
助けて兄さん・・・!!!
コメント:
2002.08.09.製作ッ!!!
アラアラまた違う方向に・・・(オイ)
そろそろ物語も佳境ですね☆
無知なんで、クローンのこととか違ってるかもしれないんですが・・・
そこもまた愛嬌で☆(←オイオイ)
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