―――――REASON


私・・・藤野恵理子は、今中学2年生。

中学校生活にも慣れてきて、部活も今が旬、ってころ。

たぶん、今がみんなにとっては一番楽しい時期。

でも、私は何も楽しくなかった。

まだ、気を許せる友達が一人として出来ていない。

何も楽しくない毎日。

でも、小学校と違って勉強も難しくなってきた。

学校を休めば・・・全く、と言っていいほど何もわからなくなる。

だから学校は休んでいなかった。

でも、何も楽しくなかった。

別に、今日明日にでも死んでも良かった。

生きている理由が私には無かったから。

でも、私は生きていた。

まだ・・・自分のことを諦めたくなかった。







夏休み。

みんなきっと色んなところに遊びに行ってるんだろうな・・・って思うと

かなり淋しかった。

でも、学校があるよりはいいと思った。

7月中に宿題も終わってしまったけど、私は市の図書館と近所の本屋、スーパー以外のところには出歩かなかった。

だって、必要ない。

どうせ私のことを遊びに誘ってくれる友達なんていないから。

自分でも、嫌になるくらい私は気が弱い。

「大人しい」って言えば聞こえはいいけど、私は駄目。そんなレベルじゃない。

単純に気が弱い。びくびくしてる・・・。

前、遊びに誘われて、断りきれずに行ったことがあったけど、みんなのあのしらけようと言ったら、洒落になってなかった。

もう二度と行くもんか。

なんて強く思ってその日は終わった。

・・・本当に・・・碌な事無いし・・・。

ふぅ。でも、夏休み・・・よかったな・・・。

学校行かなくていい、っていうのが何より!

でも、それも今日で終わり・・・。

そう、今日は8月31日だった。

登校日は休んだ。

ずっと家で寝ていた。

私はだるい体を起こすと伸びをした。

今日の食料買いに行かなきゃな・・・。

確か、お米はまだあって・・・あ、納豆切れてる。

今日は煮物でも作ろうかなー???

私はその辺に置いてあったズボンを履いて、財布をポケットに入れた。

近いから、いつも歩いていく。

別に自転車でもいいんだけど・・・自転車だと、大きいものを買ったときに困る。

いつも通り鍵を掛けて、いつも通り家を出た。

今の私に間違いなんて、何もない。



「藤野!!!」

近所のスーパー。今日の夜ご飯の買い物に来ていただけだったのに、誰かに呼び止められた。

こんなこと、初めてだった。

今までだって、私を見て無視する人はいても、後ろから声をかけてきた人なんていなかった。

しかも、この声、聞き覚えある・・・。

確か、同じクラスの・・・

「東さん・・・。」

そう、同じクラスの東真理奈《あずままりな》。

長い髪を一つに結わえてあって、そのきりっとした顔はいかにも活発そうだった。

彼女はどんな人とでもにこやかに付き合えるひと。

でも、何か自分本位で・・・周りのことなんか考えてないようなひと。

私とは正反対だ。

私みたいに自分がなくて、周りの反応ばっかりにびくびくしてるような人間とは。

嫌な人に会った。

絶対に友達面してくるんじゃないかな・・・。

「奇遇っ!!!・・・って何買ってんの?」

案の定、気軽に声を掛けてきた東さんはひょいっという感じで私のカゴの中を覗きこんだ。

「ちょ・・・」

私の制止も何のその。

東さんはカゴの中から入っているものを色々取り出した。

「何だコリャ?椎茸とか・・・人参とか・・・蒟蒻とか・・・納豆とか・・・何、御飯?」

「は・・・はい。」

「自分で作るん!?」

「はい・・・。」

心底驚いたような顔で東さんは言った。

私は、というとその迫力に押されて頷いている。

「ってことは今日1人?」

「・・・はい。たぶん・・・」

いきなり東さんはにんまりと笑った。

「じゃ、こんなの買ってないでうちにおいでよっ♪うちで一緒に食べようっ!!!」

言うが早いか、私のカゴを引っ手繰った。

「ちょっ!?あ、東さんっ・・・・」

「早速中身、返してくるねーっ♪♪♪」

東さんはそう言って高速で走っていった。

あー・・・スーパーの中は走ったら危ないのに・・・。

ってそうでなくて!

どうしろ、って言うんだろう???

あんなひとと食事とか・・・死んでも無理だし。

今だって一体どれだけ息苦しかったことか・・・。

私には、あんなひとと仲良くお喋り、なんて無理だし、したくもない!

どうしよう・・・どうしよう・・・。

断らなきゃいけないけどあそこまで強引に引っ張られたらどうしようもない。

なんて私がぼーっと考えながら突っ立っていると、東さんが全部返し終えたらしく、帰ってきた。

「よっしゃ☆藤野、行こっ!」

時間は5時―――――。いったいどれぐらい地獄の時は続くんだろう。

私は、早く終わってくれることを祈るばかりだ・・・。



コメント:
2002.11.10.UPです!
2300GETの那都さんへ!
・・・・・いきなり完結までアップです。。。(笑)
って言っても完結、って言っても完結してない話になってしましたが;
まぁそれは終わってから色々話すとして・・・。
主人公は、藤野恵理子さん。ん?と思った貴方は凄い。(笑)
私の知り合いからフルネーム、拝借してしまいました・・・。
ちなみに東真理奈も実在します。気付いた人、こっそりでっ!!!(笑)




「2」へ

□ 
Home □ Story-Top □ 完結小説Top □