―――――REASON02


案の定、東さんは強引に私に食事を勧めた。

・・・と言っても今日はバーべキューで、思ったほど硬くなかったからよかったけど。

でも、東さんの家のモノなんて私が自分から食べられるわけもなく。

私は東さんが私の皿に取ってくれた物しか食べてなかった。

早く、ここから帰りたいのに・・・。

でも、東さんの親や兄弟が大歓迎したくれた手前、そんなこと言えるわけがなかった。

特に・・・東さんのお姉さんが私を気に入った。

「藤ちゃんは何か生き甲斐とかある?」

そう、私のことを"藤ちゃん"とか呼ぶぐらい。

「いえ・・・ないです・・・」

「えー、藤野、一個ぐらいあるだろ?何かコレ!ってやつ!!!」

「藤ちゃんはまだ見つけてないだけだろー?ま、ええやん。」

・・・・・・

姉妹そっくり。

でも、お姉さんの右目の上には傷跡が入っていた。

何か、やったのかな・・・?

「お姉ちゃんたちのせいで藤野ちゃん圧倒されてるじゃんね?」

「ばーかばーか!」

「てめぇらっ!!!」

そして2人の弟。東さんは4人兄弟らしかった。

弟は双子、かな。そっくりだ。

東さんは弟2人を羽交い絞めにしてじゃれていた。

あー・・・兄弟仲良いんだなー・・・。私も兄弟がいればよかったのに・・・

「兄弟、いいな・・・」

自分からは絶対に口を開いてやるもんか・・・早くしらけてもらって帰してもらおう・・・

私はそう考えていたのに、なんてことか口に出してしまったらしい。

もちろん、この人たちの突っ込みどころになってしまった。

「いいかぁ!?こんな兄弟がっ???」

「えぇ〜・・・こんな姉貴持ったら絶対に苦労するよ・・・」

「藤ちゃん、兄弟おらんの?」

「は、はい。」

「そっかー。うちらにゃ一人っ子なんて概念わからんもんなー。」

「姉ちゃんはわかるだろ?生まれてきた頃一人やん。」

「物心付いた頃にあんた生まれたっつぅの。」

「1人って淋しいの?」

「は・・・はい。」

「なら、うちに遊びにきなよ!!!」

「そうそう!それがいいや!」

「定期的にうちに来や〜。」

「それいい!あたしもそれ勧めるわー。決定!OK?」

「は、はい。」

「やったね♪」

・・・・・・え?

あまりにもの4人の言葉の嵐に私は話を振られたら頷いてたら・・・ら!

なんかとんでもないことに頷いてしまっていたみたいだった。

そんなの・・・でも今更もう否定できないし・・・。

私が狼狽しているのをばれないように曖昧に皆の事に頷いていたら、食材を用意しに行っていた東さんのお母さんたちがやってきた。

「んー?何盛り上がってんのー?はいはい、食材だよーん☆」

・・・この親にあれらの子有り。

第一4人も子供いる母親がこんなに細いかよー!?

近所のおばさんらしい人が笑って喋りながら東さんのお母さんと一緒にやってきて・・・私に気がついた。

「あら・・・あの子、藤野さんとこのお子さん・・・?」

!?

嘘。この人、お母さんのこと、知ってる。

その人は、さらに続けた。

「藤野さんって・・・確かお母さんが・・・」

やめて!!!

叫びたかったけど、私の口からその言葉は出てこなかった。

顔色だけがどんどん悪くなって・・・手が小刻みに震え出した。

それに、いち早く気付いたのが東さんだった。

「藤野?」

私は顔を俯けたまま、動けない。

今前を向いたら涙が出るかもしれない。

「どうした?」

東さんが優しく声を掛けてくれた。

私は静かにあのおばさんの方を見た。

東さんとは目を合わせないようにした。

今だったら、絶対に泣く。

東さんも、あのおばさんの方を見た。

「あいつか・・・」

そう言うと、みんなで机でわいわいしていたのに、急に立ち上がって、そのおばさんの方へ言った。

「やめろよ!ンな噂話とか話すなよ。うっぜーな、帰れや!!!」

そのおばさんは吃驚したように目を丸くした。

「・・・え、ええ・・・ごめんなさいねぇ・・・」

全然悪いと思ってなかった様子でそれだけ言うと、話題を変えて東さんのお母さんと喋りだした。

東さんのお母さんはそっと東さんに目配せした。

その目は、「ありがとう」と言っているようにしか見えなかった。

東さんはゆっくり歩いて戻ってきた。

私は、立ち上がって東さんのほうに駆け寄ると消え入りそうな声でこう言った。

「ありがとうございます・・・」

満足に顔も見れなかった。

でも、とにかく嬉しかった。

東さんは、どういう顔をしていたかは・・・わからなかったけど、私の頭をぽんぽんっと2回叩くと大声でこう言った。

「どーってことねぇって。それより早く食おうぜー♪あたしの分が無くなっちまう☆」

東さんは机に向かって駆け出した。

ちょっと離れたところでおばさんがヒソヒソ話をし出した。

別に、お母さんのこととか言われてもいいや。

それに、東さんのお母さんなら・・・きっと理解してくれるんじゃないかなぁ・・・

なんて私は甘ったるいことを考えながら、席に戻った。

前よりもちょっと自分から話し掛けて・・・笑いながら、少し自分からも食べた。



コメント:
2002.11.10.UP〜
ちょっと書いてて楽しくなってきた、というのが見え見えの回。
東一家は書いてて楽しい☆だから、恵理子も楽しくなってくるんですよねぇー♪
なんていうことにして!
まだまだ続きます。




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