―――――REASON03 食事の後、片付けを他の兄弟たちでやってくれるから、ってことで私は東さんと2人で涼んでいた。 「あのさー、藤野。」 「?」 「あたしのこと、『東さん』って呼ぶなよ。この家の中じゃ誰のことかわかんなくなっちまう。」 「え・・・じゃ、何て呼べば・・・」 「名前でいいよ。真理奈でいいから。」 「そ、そんなの悪いです・・・。」 「悪いって、同級生だろが?」 「で、でも・・・」 「あたしも藤野のこと恵理子って呼びたいしねっ♪」 多分、私が東さんだったらもうキレてる。 こんなうじうじしたやつ・・・こっちから願い下げ、って。 なのに東さんはにやっと笑って、最後のセリフみたいなことをさらっと言う。 どうして、東さんがクラスの人気者か、少しわかったような気もする。 本当に、いい人。 「ありがとう・・・でも、呼びつけは、無理です。」 「え、何でー?」 「やっぱり、私と東さ・・・とと、真理奈ちゃんとは対等じゃないので。」 「対等じゃない?」 「はい。真理奈ちゃんは凄いひとです。私は、駄目ですけど。」 私はにこっと笑顔を作った。 半分つくり笑顔、半分本物。 「別に凄くなんかないけどさー・・・」 真理奈ちゃんは頭をポリポリと掻いて、決まり悪そうに俯いた。 「そいや、恵理子は何も生き甲斐とか・・・無いって言ってたよな。」 「はい。・・・私も探したいんですけど・・・」 「対等じゃない、ってことは絶対に無いと思うんだよねー、あたしは。ただ、生きる目的っつぅか理由っつぅかそーいうもんがないからなんとなく自信が無くなっちゃうんじゃね?」 「自信・・・?」 「ってあたしは思うよ?だって、恵理子ってさ、皆は恵理子と友達になりたいのに自分から内に篭ってるところあるじゃん?」 「え・・・」 「なんか、打ち込めるもん探したら、絶対毎日楽しくなるって!!!」 真理奈ちゃんはそう言って笑った。 彼女は、綺麗だった。 これが、打ち込めるものを持っている人、っていうこと・・・? 「なら、真理奈ちゃんの打ち込めるものって何ですか・・・?」 「あたし?あたしは・・・バイオリンかなー?」 「ばっ、バイオリン!?」 思いも寄らなかった単語が出てきて、思わず私は叫んだ。 「そんなにあたしがバイオリン弾いてたら意外かよ?」 ちょっと不貞腐れた感じで真理奈ちゃんが言った。 「意外なんてものじゃないです・・・」 心の底からそう言った。 そして2人で顔を見合わせて笑った。 でも、ここまで真理奈ちゃんを活き活きとさせてるなんて、よっぽどバイオリンが好きなんだろうな・・・。 「私、真理奈ちゃんのバイオリン聞いてみたいです!」 真理奈ちゃんの顔色が曇った。 「げ・・・。はっきり言って下手だぞ?」 私は無言で笑顔を返した。 「しょーがねぇな・・・あたしの部屋にバイオリンあっから、来てよ。」 そう言って真理奈ちゃんは家の中に入った。 バーベキューは外だったから、家の中に入るのは初めて。 入った瞬間、誰かの肖像画があった。 「?これ、誰ですか?」 「ああ・・・パガニーニ。」 「ぱ・・・?」 「バイオリンの名手だよ。」 真理奈ちゃんはかったるそうに説明してくれた。 「うちの親父が好きなんだよ・・・そういうの。あの人バイオリンに命懸けてっから。」 「凄いひとなんですね・・・?でも、お父さんは何をなさってるんですか?」 「親父は弾く方じゃなくて作るほう。んで母さんが弾くんだ。」 「え、ということはバイオリンを作る人なんですか!?」 「ま、副業だけどなー。それだけじゃ食ってけねぇし。」 「凄いですっ!!!」 私は感動して叫んだ。 家族でバイオリンなんて・・・かっこいい!!! 真理奈ちゃんは頭を掻いて、ちょっと笑った。 「お姉さんや、弟さんたちもバイオリンやってるんですか?」 歩きながら私は真理奈ちゃんに話し掛けた。 「姉貴はやってない。弟2人はやってる。姉貴は本当はやってたんだけどもうやめた。」 真理奈ちゃんは振り向きもせずそう答えた。 黙々と歩いていたら、急に止まって真理奈ちゃんが振り返った。 「受験のときにしばらくやってなくて・・・久しぶりにやってみようかと思ったらあたしの方がうまくなってたんであの人はやめたんだ。」 そしてけらけら笑った。 「でも、あたしも弟2人もへったくそ!!!うまいのは母さんぐらいだな・・・」 そしてまた、歩き出した。 真理奈ちゃんの言っていた通り、家の至るところに絵やらなんやらがあった。 「絵とか・・・本物なんですか?」 「んな馬鹿な!・・・金がねぇ・・・」 ぼそっと最後に呟いたのが面白くて、私は笑ってしまった。 「ごめんなさい〜。」 「いや、笑ってくれてた方が嬉しいからよし!」 真理奈ちゃんもにかっと笑った。 真理奈ちゃんの部屋に着いた。部屋は、綺麗に整頓されていた。 隅っこにバイオリンが立てかけてあった。 「ここで弾くと近所迷惑だから防音室に行こう。」 「防音室!?そんなのがあるんですか!?」 「うち、一応バイオリン教室開いてるからなー。」 そう言うと真理奈ちゃんはまた頭を掻いた。 照れるとそうするのが彼女の癖らしい。 「え、お母さんが、ですか?」 「あぁ。と言ってもあんまり生徒いないけどなー。」 そして防音室に着いた。 私はわくわくしてたまらなかった。 「じゃ・・・行くぞ。ブーイング無しな?」 そして真理奈ちゃんは弾き出した。 私の知らない曲だった。 私はバイオリンって言ったらオーケストラしか知らないから、音の雰囲気は思ってたのと違った。 でもその旋律は、ちょっと哀しげで綺麗だった。 そしてバイオリンを弾いているときの真理奈ちゃんの表情は、とても綺麗だった。 要するに・・・感動した・・・。 コメント: 2002.11.10.UP☆★☆ はい・・・なんとか。。。(汗) 那都さん、ほんとにすいませんっ!!!ようやくリクの断片が・・・ はっきり言って、バイオリンについて何も知らないんです・・・(><) だから、間違ってるところとかあったらご指摘お願いしますっ!!! |