夢見が丘
2.独りじゃない
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それから数日後。
あれから何人もの人が来たけど・・・
やっぱりだめ。誰一人として私の存在に気づいてくれていないみたい。
あ〜あ。このまま私はずっと独りでこの丘に立ち続けろって言うの??
そんなの・・・無理だよ。
人は(私は人じゃないけどネ)、独りでは生きて行けないんだよ・・・?
「はあ・・・。」
私が大きなため息をついたときだった。
「どうしたん?おっきなため息なんかついて。」
そう言いながら16,7ぐらいの青年が私の隣に座った。
また、カップルかぁ・・・?見てるとこっちが虚しくなるから見ないとこう・・・。
「おい、無視かよ〜!!!」
あ〜あ、うまくいってないのかな。
いかんよ〜・・・人とのつながりは大事にしないと・・・。
私は最近身にしみてわかったんだから。
「おい!!!」
そいつは私の顔を覗き込みながら言った。
「やめてよ、私のほう向いていってたら私のことかと思っちゃううじゃんか!」
私は聞こえないということをわかっていながらも、声に出して言ってみた。
「いや、あんたのことだって。」
青年の目は完璧に私の目を見ていった。
「えええ!?私っ!?そんな・・・私は騙されないよ???」
「いや、いま、『えええ!?私っ!?そんな・・・私は騙されないよ???』って言ったあんたなんだけど・・・。何でそんなに自分だと思ってないんだ?」
「っていうかね?あなた・・・私が見えるの?」
「はぁ?あんた頭大丈夫?そんなの当たり前じゃん。見えないやつなんているの?」
しんじ・・・られない!!
「ほんとにほんとにほんとっ!?」
「ほんとにほんとにほんとですー。なんだよ、変なやつだなあ・・・」
「ほんとね!?」
「はーいー!」
や・・・・・・・・・ったあ!!!!!
私の存在がわかる人間がいたんだ!!!
「へへ、ありがとう!」
「なんだよ、おまえいじめられてたクチか?人間不信・・・とかか?」
「いや、違うけど・・・。でもね、人とおしゃべりするのは久しぶりなの!」
「へえ。俺でよけりゃいくらでも付き合いますよ?」
「ぜひ!!!あ、そうだ、あなた・・・名前は?」
「俺?俺は・・・伊藤。伊藤光輝。おまえは?」
「あ。
・・・・・・・あや。あやっていうの!」
「へえ・・・あやか・・・。なんか、おまえにぴったりだな。」
にかっと笑った光輝。私も笑い返す。
でも、内心はひやひやした。
だって・・・私の名前なんて「人間の夢担当の精霊」ぐらいなもんだし。
"あやちゃん"さん・・・あなたの名前、ちょっとだけ貸してね・・・。
「あや。で、さっき言ってたことは何なんだ?」
「う〜ん?あれ?あれは・・・なんていうか、学校をやめちゃってね・・・」
「えっ!?まじ??いいな〜・・・。俺も学校やめたいよ〜。・・・で、なんでやめたんだ?」
ちょっと・・・ そんなに突っ込まないでヨー。
私の嘘八百がドレぐらい続くかわかったもんじゃないじゃんか!
「え・・・。と、父さんが過労で倒れちゃって・・・学費が払えないから・・・」
戦争戦争でお金がなくて学校に行けないこの時代。こんな話も決して珍しくはない。
案の定、光輝はそうか・・・と頷いただけだった。
「ま、学校なんて行かなくても大丈夫だしな〜・・・。この時代、いつ死ぬかわかんないんだぜ?余裕ってやつだな!」
私を慰めるような感じで明るくそう言った光輝。
「ありがとう・・・」
私は心の底からこの言葉を言った。
かーん かーん かーん かーん かーん
5時の鐘がなると光輝ははっと気づいたようにそれを見上げた。
「ごめん。家の学校全寮制でさあ、門限5時半なんだって。だから・・・ごめん!」
本当に恐縮してしまっている光輝。
ちょっと寂しいけどこんなふうにいわれちゃあね・・・。
私はふっとわらって、こう言った。
「いいよ。早く帰らなきゃ・・・ね。その代わり、明日も来てよ!」
光輝の顔がぱあっと輝いた。
「うん、もちろん!言われなくても来ようと思ってた!・・・じゃあな!」
走り去る光輝。
さみ・・・しいな。
だけど、明日、また来てくれるって言ったよね?
私は私の心に花が咲き乱れたような感触を味わった。
その日の夜・・・
私は初めて改めて人間を見た。人間の夢を・・・。
笑っている人間は誰もが輝いていることを初めて知った。
でも、その人間はけして独りじゃない。
誰か、支えてくれる人がいて初めて夢を持つことができ、心の底から笑うことができるのだ。
「やっぱり・・・人は独りぼっちでは生きていけない。
誰でもいいから話を聞いてくれる人が必要だ・・・。」
私はもし光輝がいなくなったら・・・生きていけるのだろうか?人として。
それは・・・まだ、わからない。
コメント:
あ〜懐かしい^^
ようやくあやちゃんがちょっと前向きになってきました♪
ちなみに、「あやちゃん」という名前は私の学校のすごくかわいい友達からとらせて頂きました☆
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