夢見が丘


6.約束

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そして、次の日。

次の日もいい天気だった。

足もとの向日葵の花もまだ健在だ・・・。

いまごろ、光輝・・・荷物の整理でもしてるのかな・・・?

私がそう思っていたとき。

「あや!きちまった!」

という、聞きなれたあの声がした。

「光輝!?」

「へへ、抜け出してきちまったよ。まあ、いいよな!」

「えぇ〜・・いいのぉ〜???」

「うん。あやに最期に一言いいたいことがあったからな。」

「最期だなんて言わないでよ・・・」

「まあ、戻って来れるようだったら・・・いや、無理だけど・・・さ。」

「光輝・・・」

「いや、こんなことを言っている時間はないんだ!すぐに戻らなきゃいけないから・・・。」

「行っちゃうの?やっぱり・・・」

「ああ、こればっかりはしょうがない。」

寂しいよ・・・

2人は黙り込んでしまった・・・

でも、光輝はぱっと顔を上げるとこう言った。

「俺、・・・もう死ぬだろうと思う。だって、特攻隊になって帰ってきたやつはいないから・・・な。だけど、俺は、また・・・あやに会いたい。だから・・・たとえ死んでも絶対生まれ変わって会いに来るから。絶対に。・・・これだけ伝えたかったんだ。」

「・・・わかった。私、ここで待ってる。ずうっとずうっとずうっと・・・永遠に。」

「・・・ありがとう。」

沈黙が過ぎる。

これがきっと、私たちの最後。

そう思うと、何を言っても言いたりなくて。

何を言っても、私の想いは伝わらなくて。

私は、口をひらけなかった。

でも・・・

「あや、俺、あやのこと――――――」

光輝が、何かを言いかけた。

私がたぶん、ずっと聞きたかった言葉を・・・。

その時だった。

ぴかっ

どおおーん


急に激しい光に広島の町は襲われた後、爆風と大きな爆音がした。

その爆風が晴れたあと・・・





そこに、光輝の姿はなかった。

向日葵も、なかった。





あったのは、影だけ。

いろいろな人が悲鳴をあげている。

そして、その人たちはもう、人間だという事が確認できないぐらいになっていた。

建物も曲がり、破壊され、ほとんど原型が無い。

動物たちも、黒ずんで苦しんでいる。

これは・・・なに?

いったい何が起こったの???

その時の私は何が起こったのか全くわからなかった。

そう、今日は1945年8月6日。

ここは広島。

「ヒロシマニ アメリカ軍カラ 原子爆弾 投下」













コメント:
・・・という、コトになりました。
最初に、広島、と言ったところで気がついた人もいたかもしれないけど・・・。
あやちゃんは、精霊だから何も被害をうけなかったんですね・・・
寂しいです・・・(><)


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