VAIO 「ん・・・?」 足元ばかり見て歩いていたら肌色の物が何か目に入った。 「ああ、死体か。」 ほっと胸を撫で下ろした自分に思わず苦笑する。 死体を見てほっとするなよ・・・ 自己嫌悪に陥りながらもこうなってしまったなんて世も末だとも思う。 ―――――そう・・・この世は末期だった。 進む少子化に高齢化。 どの国も経済に困り果て、地球上の全ての国が統合。 宗教紛争や民族紛争の暴発する上に、高齢化に歯止めはかからない。 高齢者ばかりで人口は増え続け、若人達が飢えで死んでいく。 そこで地球政府が取った対策は――――― 新種兵器の使用。 兵器、と言っても爆弾などではなく、薬だった。 浴びただけで一時的に体力が奪われる薬・・・ そう、高齢者だけを殺す薬・・・のはずだった。 最初は政府の狙い通りもう長くない高齢者がどんどん殺されていった。 それに気付いた民衆の力によってその薬の使用は止められたが・・・ 50%以上の人間がその薬を浴びていた。 本人には何の影響もなかったのだが、異変は子や孫に現れた。 生まれたときはなんでもないのだが、ある程度まで成長すると体の一部が溶けてなくなっていく。 それが腕であることも、顔であることも、体のどの部分でもあった。 気が付けば、正常な人間は80%ほどに減った。 5人に1人が体に異常があった。 使えない労働力・・・ また、地球は貧困に陥った。 だが、そこである時、ある科学者が発明したのだ。 そう・・・「VAIO」を。 「VAIO」は、肉の塊だった。 それを人間の体に移植することによって、「VAIO」の持っている遺伝子がその人間の遺伝子と統合し、元の形に戻る――――― つまり、失われた各部位が戻り、正常な人間になれるというものだった。 画期的な発明だった。 そしてそれからしばらくの間、爆発的に売れた。 世界は正常な人間が増えた。 ―――――ように見えたが・・・ 「VAIO」は猛烈な毒を放っていた。 それに気付かず買った人間たちは 「VAIO」を移植した自分には何の影響もない。 だが、恋人、友人、両親、兄弟・・・自分の周りの人間がどんどん死んでいく。 まともな姿になっても、働きに行けばその会社の者が死ぬ。 独りになる。 あっという間に人口は激減した。 政府は慌てて「VAIO」の発売を取りやめ、「VAIO」の回収に勤しんだが・・・ 「VAIO」を移植された者は、外傷から死なない。死ねない。 手首を切ろうが、「VAIO」の再生能力で再生してしまう。 死ぬには、病気や、寿命しかないのだが、 病気については、外から入ろうとするウイルスは「VAIO」の毒によって殺される。 だからほとんど感染しない。 待つのは―――――寿命のみだ。 だが、寿命で「VAIO」移植者が死んだとしても、「VAIO」だけ肉塊となってその場に残る。 そして、そこに「VAIO」移植者じゃない人間が通りかかったら――――― 「VAIO」はその人間の中に入り、また毒を撒き散らすのだ。 もちろんその人間は、別にどこも欠落していない正常な人間でもありえることで、 多くの人間が、それによっても「VAIO」と一体化した。 いつしか『「VAIO」移植者』は、『「VAIO」感染者』と呼ばれるようになり、 人々から隔離された。 どうせ隔離されているなら、と政府の人間は「VAIO」感染者の隔離施設を建設しようと提案し、 そして「VAIO」感染者は「VAIO」の毒で死なないことが判明した。 隔離施設の建設、そして完成。 自分から隔離されようとしてくる人間なんているのか―――――?と疑問に思いもしたが、 かなりの人数が申し出てきた。 自分の愛しい者がどんどん自分によって死んでいってしまった経験をした「VAIO」感染者は、 精神がずたずたに切り裂かれて、そしてやってきた。 自分なんかこの世に必要ないのだ、と・・・。 自殺を図っても「VAIO」の再生力のせいで死ねない「VAIO」感染者を政府は受け入れようとしたが そこで問題が発生した。 「VAIO」感染者と「VAIO」に感染していない者の、コンタクトが取れない。 政府の人間はもちろん「VAIO」には感染していない。 誰が「VAIO」感染者隔離施設の管理をするのか・・・? 「VAIO」感染者がするしかなかったが、それをすると、管理者と政府の通信が行えない。 今の世の中、電話やメールなどという手段があるのだが、 何より、「VAIO」に感染していない人間には、「VAIO」感染者に対する差別意識があった。 ―――――あんなヤツらには任せられない――――― だが、ならどうするというのだ? 「VAIO」に感染していない者が管理者になれば、1秒で死ぬだろう。 そこで必要となった人間は・・・ 『「VAIO」に感染していないのに、「VAIO」の毒で死なない人間』だった。 そんな都合のいい人間がいるわけない・・・と政府は一時もめたが・・・。 いたから、全てが丸く収まった。 そしてその人間と言うのが――――― 俺、なのである。 コメント: 2002.07.12.UP☆★☆ 777GETの竹中一馬さんへ☆ なんだけど・・・詩、っていうリクのはずだったのに物語ですッ!(汗) ごめんなさいっ!ヤだったら書き直すけど・・・。(汗汗) テーマ「毒」にそって書いてます☆(←あ、ばらしちゃった♪) まぁ早いうちに次が出せるように頑張ります・・・。(逃) |