VAIO15



"くそ・・・"

一瞬見せてしまった隙。俺は何よりも悔いていた。
たかが・・・名前で・・・
もう、瞳は開けられなかった。
俺の再生力は、他の『VAIO』に比べると只管遅い。
銃で撃たれたときも血が湧き出て・・・倒れそうになってから再生した。
これぐらいの大きなダメージを受けると、流石に倒れる。
どぉうっ・・・
俺の体が地面に落ちる音と、銃が打ち込まれる音がした。
"結構重い弾・・・なら、俺のじゃないな・・・"
3分も立てば起き上がれるだろうが、それぐらいの時間があれば『D-VAIO』たちは逃げるだろう。
俺は静かに息を整えた。
今回は、もう無理だ・・・。
ふ・・・と右の靴を気にした。
違和感がある。
いつもは銃が入っているのに今回は入っていないからだろう。
確か弾は3発・・・。俺は最後の奴に発砲したのだろうか?
記憶に、ない。
もしあの弾を持っていかれて大量生産でもされたら、うちにいる『VAIO』たちが危ない。
あの弾で撃たれても余裕で生きている『VAIO』は・・・
俺だけ、だな・・・。
右足を少し伸ばすと、ず・・・とガーゼがずれた。
"ほらな、雪。ガーゼなんて必要ないだろ?"
俺はそのまま昏睡した。




「え・・・悠って・・・『VAIO』に感染してるの?」
22歳の夏。俺は雪に打ち明けた。
無言で頷く俺に、雪は怪訝な表情を向けた。
「えっ・・・じゃあ、毒は?」
「出ない。」
「何で???」
「わからん。」
俺が悉く即答すると、雪は笑った。
「何それ?意味わかんない〜っ!」
「俺もわからん。」
俺も笑った。
そう・・・俺は笑えた。
雪は立ち上がると俺を後ろからぎゅっと抱きしめ、ほうと溜息をついた。
「うん…いいよ。…何でも言って?何だって受け入れる。悠のことなら別に何もかも普通。大丈夫。貴方の事なら何だって知りたいの。…ね?」
俺は俺の首に回されている雪の手にそっと唇を置いた。
「ああ。・・・雪のことも、何だって俺に言ってくれるんなら・・・」
大学のオープンカフェ。
人がちらほらといるが、気にしなかった。
「もちろん・・・」
雪が俺の後頭部に自分の顔を押し付けた。
俺にはその感触が心地よかった。
ずっと2人で一緒にいると信じていた。
未来に今と変わりはないと信じていた。
雪と俺の2人でずっと生きていけると信じていた・・・。


"最近物騒だから、血が出たときの為にガーゼを入れていったほうがいいよー!"

"本当に危ないときに血が拭けるか。"
"わかんないじゃない!入れて行きなよ!!!"
"たかが教育実習だろうが・・・"
"何があるかわかんないでしょっ!?"
"そんなな?自分が本当に死にそうになったときになんかガーゼとか使えんて。"
"でもお母さんが血を拭うにはティッシュよりガーゼって言ってたもん!"
"ガキかお前は?・・・でも・・・"
"でも?"
"いや、何でもない。とにかくガーゼはいらん!"
"絶対にいるって!保証するからっ!!!"
"保証とかそういう問題じゃなくて・・・"
"絶対にいつか要るよ!!!"






コメント:
2002.11.22.UP☆★☆
まさかの3作アップ。いや・・・。すいません。
でも、この回は全くと言っていいほどお話進んでないですね・・・。
雪との記憶の話を入れようとするとどうしてもそうなってしまうっ!(><)
いっそのこと出逢いから死まで外伝かなんかにして書いちゃおうかな・・・。
雪の言葉が悠にとっては全てで、雪がいるから今の悠がいる。
それぐらい悠にとって大切であり、必要な人間・・・それが雪です。。。
だから重要人物には間違いない!・・・んですけど・・・。あぁもうどうしようっ!




16話へ。

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