VAIO20

「で、柏芳久たちの狙いは何なんでしょうね?」
あれからだいたい3時間ぐらい3人で色々話しただろうか。
結局話題はそこに行き着いた。
「ヨシヒサは・・・破壊が目的だと。」
「破壊ッ!?」
篠岡と湯木の叫びがハモった。
「破壊って、まさか全世界の!?」
「そんな馬鹿な!それをしてヨシヒサの何の特になる?」
「でも、だったら一体何の破壊なんですかっ!?」
「そ、それは・・・」
「ほぉら、他にありえないじゃないですかぁ!」
「でも、全世界の破壊は意味がないような気がしないか?」
篠岡と湯木の漫才のようなやり取り。
いい加減に飽きてきた。
こんな状況じゃなければ勝手にやらせとくのもいいが・・・。
今はそれどころじゃない。
「少し黙れ。」
俺がセリフに割ってそう言うと、2人ともバツの悪そうな顔で黙った。
「俺の考えでは、人間の破壊か、『VAIO』の破壊。それとも両方か。このどれかだと思う。」
「人間の・・・破壊・・・?」
篠岡が呟いた。
「どうして。どうして・・・でも、私が盗聴器で聞いていた時は、こんな話聞こえませんでしたけど・・・。」
「さぁ〜強ち気付いていたのかもな。盗聴器に。」
篠岡が思いつめた顔でそういうのに対して、湯木が軽く答えた。
篠岡は不服そうな顔で湯木を見つめたが、何も言わなかった。
そして湯木は俺のほうに向いた。
「人間の破壊、てぇのはわかる気がする。殺す、ってことだよな?だけど『VAIO』の破壊っていうのはどういうことだ?『VAIO』は殺そうと思って殺せるもんじゃないだろう?」
何かが心の中で動いた。
"『VAIO』は殺そうと思って殺せるもんじゃないだろう?"
誰かと一緒だ。
でも俺はその考えを頭から振り払った。
とにかく、今は篠岡と湯木に事情を説明するのが先だ。
俺は話し出した。
「・・・殺せるんだ。」
「なっ!?・・・新手の病原菌か何かか?でも『VAIO』に再生されるよな・・・?どういうことだ?」
「俺が、あいつらの前で証明して見せた。」
「!?!?!?!?」
湯木と篠岡は何か言おうとしたが・・・言葉が出なかったようだった。
「・・・どう・・・やって・・・」
掠れた声をやっと出せたのは湯木だった。
「・・・詳しくは言えないが、ある液体を火薬に混ぜて・・・乾燥させた。その火薬を詰めた弾を銃に込めて・・・あいつらを撃った。」
「それで、『VAIO』が破壊された、って言うんですか!?」
「ああ。」
ぽんっとそう答えると、篠岡が湯木の顔を見た。
湯木は俺の顔をじっと見つめた。
「・・・詳しく、言ってくれよ。頼む・・・」
「無理だ。」
湯木の必死な声にも、俺は即答した。
これだけは言うわけにはいかない。
「そんなの・・・。ここまで言っておいて、それでいて言えないとか有りなんですか?私たちだって、『VAIO』のことについて色々考えて・・・たくさん巻き込まれて・・・いえ、一人の人間である以上は絶対に巻き込まれる問題なんですよ?それなのに、・・・そんなの、ないですよっ!!!」
大音量で篠岡が捲くし立てた。
いつのまにか篠岡は立ち上がっていた。俺を厳しい目で見下ろしていた。
俺はじっと篠岡の顔を見つめた。
俺も立ち上がった。
「いつか・・・。」
そう呟くと篠岡と湯木の顔を交互に見つめ、体を翻した。
「俺はそろそろ帰る。」
「・・・鷹多君・・・。」
湯木がぽかんとした顔で呟いた。
篠岡がいきり立った。
「いつか、っていつなんですか!?その"いつか"は来る日があるんですか!?本当に私たちと協力する気があるんなら、今言うしかないんじゃないですか!?」
篠岡が真面目にぶち切れていた。
他の人間に本気で切れていたところを見たことは何度かあるが、俺に対してこんな態度を取ったのは初めてだった。
「今言って欲しいのか?・・・それは無理だ。諦めろ。」
「嫌ですっ!!!帰るって言ったって、どうやって帰るって言うんですか?無理でしょう?事情を説明したくないから、ってそれはないんじゃないですか!?」
篠岡は涙目だ。
だから・・・俺はこういうタイプは嫌いなんだ。
何でもかんでもに首を突っ込みたがって・・・外されたら喚き散らす。
うざったい。
俺はため息を付きながらも、無視するわけにもいかず、答えた。
「帰る方法なんていくらでもある。事情を説明したくないから帰るのかもしれないな。でも、それははっきり言って篠岡には関係ない。少し黙れ。」
俺は言葉を発しながらドアノブを捻った。
篠岡から怒鳴り声は聞こえなかった。もう反論できなくなったのだろうか。
靴の爪先を地面にトントンとぶつけて靴の置くまで足を入れていたとき、俺が政府本部ビルに来た理由を唐突に思い出した。
「あー・・・湯木、本部ビルから勝手に機械自動修復機持って行っていいか?」
いきなり話し掛けられた湯木ははっと我に返ったらしく俺のほうをぱっと見たあと・・・立ち上がった。
「いや、俺も政府ビルに戻る。だからその時持って行ってくれ。多分場所が移動してるからな。・・・篠岡、邪魔したな。」
湯木も靴を履いた。そして俺がドアから外に出ると、続いて出てきた。
篠岡は結局、何も言わなかった。
「・・・女って怖いな・・・」
湯木がポツリと呟いた。
・・・俺はちょっとウケた。








コメント:
2002.12.26.UP☆★☆
篠岡芽美さん・・・ぶち切れ。(爆)
まぁ、他の人の情報聞くだけ聞いといていざ自分の番となると逃げたので・・・(笑)
好きな人だからこそ、そういういい加減なところが嫌だったんでしょーねーvvv
でもその凄い剣幕の篠岡に負けてないひょうひょう悠(笑)。
ある意味一番困ってるのは湯木。(爆笑ccc)
さぁて、ようやく説明のところから抜けたー。動きがないですもんねぇ(^^;)




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