VAIO23


"はーくんっ♪♪♪"
"だからオマエその『はーくん』っていうのやめろよ・・・"
"えぇ〜!?だって、名前、『悠』でしょう?何が悪いの!"
"いや、でももうすぐ二十歳だぞ・・・?"
"幼馴染の誼じゃないっ!それぐらい・・・"
"でもな?人前では恥ずかしいだろ?"
"第一、高校の友達にだって『はーくん』って言って紹介してるわけだし・・・。"
"オイ。ちょっと待て。・・・マジか?"
"うん☆・・・ってそんなに嫌そうな顔しないでよー!?・・・しょうがないなぁ。じゃあ、何て呼べばいいの?"
"別に・・・普通に、『悠』でいい。とりあえず『はーくん』なんて呼ばなければ!!!"
"OK〜♪じゃ、悠ッ!!!"
"雪・・・"

『悠!!!』

『悠!!!』

『悠!!!』

『はるか!!!』



「はーくん!!!」






「はーくん!!!はーくんだろ!?」
「う・・・・?」
「お!?気付いたかっ???あんた、『はーくん』だろっ!?」
目を開けたら知らない女が目の前にいた。
金髪のロングでストレート。頭には包帯を鉢巻のように巻いている。服装はTシャツにジーパンだ。
俺は、・・・?
「あー・・・そうか、倒れたのか・・・。」
やっと理解した。さっきのは夢か・・・。でも、ここはどこだ?工場跡・・・?そしてこの女は?
「はーくん、オレのこと覚えてないか?」
自分のことを「オレ」という女・・・どっかで記憶が・・・
そしてなにより俺の事を「はーくん」と呼ぶ。
そんな女は雪以外に・・・
「・・・武藤か・・・?」
「あったり〜。武藤檀(むとうまゆみ)だ!覚えていてくれたのか・・・!」
どうして、この金髪の馬鹿みたいに長い髪や額の包帯で気がつかなかったのか・・・。
やっぱり、俺は極度に疲労していたらしい。
「おまえを忘れるか・・・。忘れたくても頭にこびりついている。」
さも嫌そうに俺は呟いた。武藤は可笑しそうに笑った。
「久しぶりだな・・・何年ぶりだ?」
「・・・7年ぶりくらいか?よく俺がわかったな。」
「はーくん全然変わってないから誰でもわかるぞ?」
武藤はそう言うと立ち上がった。そして後ろを向いた。
「ほら、見てみろよ!オレたちの・・・雪さんたちの、仲間だ!」
武藤の向こう側を俺は覗いた。
そこにはざっと15,6人・・・高校生ぐらいの男がいた。
服装は、まちまちだが全員頭に武藤と同じように包帯を巻いていた。
「武藤、まだやってるのか・・・暴走族・・・」
俺が呆れたような口調で言うと、武藤は大きな声で否定した。
「もう暴走族じゃねぇっ!ただの、バイクのチームだよ!!!」
その必死な表情を見ると、どうやら・・・本気のようだ。
「悪い。・・・でも、頭の包帯は・・・?」
「皆してる。これが、雪さんのスタイルだっただろ?あと・・・逆十字クロスのピアスと・・・」
武藤の耳には何も付いていなかった。
「クロスのピアスは誰もしてないな・・・」
「それは・・・それだけは、雪さんのスタイルだからなっ!オレたちが勝手にするもんじゃないだろっ?」
武藤は力説した。
俺は、ふっと笑った。
「・・・そうだな・・・」
無性に嬉しかった。
さっきまでの焦りや不安も、
・・・雪を知っている人物がいる。
それだけで。
全て、
全て無くなった。
雪は生きている。
たとえ肉体がまだ不完全でも。
存在が生きている。
笑ったのは、久しぶりだったかもしれない。
でも、今の俺には感情が、ある。
雪にもらった・・・感情が、ある・・・。








コメント:
2003.01.19.UP☆★☆
雪の・・・昔の知り合い、武藤檀サン初登場です♪
いやぁ〜・・・最近の事情に疎いもんで凄い古臭い奴らになってしまった・・・(^^;)
まっ、こんなのも・・・アリなのかな・・・(汗)
ずぅっと「はーくん」と呼ばせたかったので(笑)
その願いが叶って・・・嬉しいです。(オィ)




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