VAIO28


それから数日後。
廊下をひとりで歩いていたら、いきなり水無月が俺のもとへ走り寄って来た。
「はーくんっ、はーくん!」
あの時から結局俺のことを"はーくん"と呼ぶようになっていた。
「何だ?」
「あのね、凄い事に気が付いたのっ!私・・・そうよ、親が離婚してたのよ!!!」
「?」
「だからね・・・はーくんと一緒にいたとき、私は水無月雪じゃなかったの・・・『茶道雪』だったのよっ!」
・・・全く覚えは無かった。
だけど、俺はもうどうでもよかった。
水無月雪に少しでも近づきたかった。
そのためなら、どんな嘘でも吐けた。
俺ははっとした表情をつくって、顎に手を当て、こう呟いた。
「・・・なるほど。」
「ッ・・・思い出せた!?」
雪が期待に満ち溢れた表情で俺にそう、聞いた。
俺はそれに対して何も言わなかった。
ただ、極上の笑みと雪を抱きしめる事によって表現した。
「はーくん、はーくん・・・」
雪が俺の名を呼んでいた。
非難の声なのか喜びの声なのかも判らなかった。
そして周りの視線さえ気にならなかった。
ただ、腕の中にいる雪が愛おしかった。
ただ、抱きしめていたかった。
ずっと苦しかった"ココロ"が救われた。
ただ、雪を抱きしめた、それだけで。
ただ、雪を愛していた。
そう・・・俺は雪を愛していた。
もう我慢できなかった。
「ごめんな・・・雪・・・」
そう、雪の耳元で呟いた。
雪も俺を抱きしめた。
雪も俺の胸に顔をうずめながらこう呟いた。
「ありがと・・・」
何に対しての言葉かはよくわからなかった。
けれど、今、ここに雪がいる。
そのことが嬉しすぎて俺はそんなことどうでもよかった。
そして雪より俺のほうが"ありがとう"と言いたかった。
雪の存在に感謝したかった。
俺は、雪を愛していた。



俺は、雪を愛していた。



"愛っていうのは究極の感情。悠もそれを感じることができたらいいのに・・・"
母さん、俺は・・・究極の感情を手に入れることが出来ました。
それだけ、お知らせします。




そして、俺は雪と一緒にいるようになった。
そのときは、ただ雪と一緒にいたかったからついた嘘。
俺は幼馴染だという嘘。
それがどんどん重荷になってくるなんて思わなかった。
どうして、俺は雪の幼馴染じゃない?
どうして、俺は・・・。
俺の過去を塗り替えたくなった。
だけど、これを。
死んでも雪だけには言うわけにはいかなかった。
何があってもばれるわけにはいかなかった。
俺は、雪の幼馴染の「タカダハルカ」でなければいけなかった。
「はーくん、これ、昔やったよね!」
雪が色々言うたび、俺の心が痛んだ。
どうすれば、どうすればいい?
俺は、どう足掻いても雪の幼馴染じゃないんだ。
それが、どんどん俺を苦しめた。
雪の将来を動かしてしまうほどの存在。
誰だ?誰なんだ?
俺は誰の代わりを演じているんだ―――――?






コメント:
2003.02.23.UP☆★☆
今回で終了です!!!過去の話はね。(おぉぉぉ・・・←サクラ)
お疲れ様でした、皆さん。。。面白くなかったっすねぇー?
でも、いや〜なことに疑問を残して終わるという。最悪な展開に。(笑)
次回からは本編をお楽しみくださいvvv




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