VAIO33


「・・・変だと思わない?雪は、誕生日が来ても 28歳。結加は、24歳。4つしか離れてないのよ。だけど、思い出して・・・。"茶道雪"がはーくんと出会ったとき。あの時、何歳だった?」
「5。」
「当たり。つまり、もう結加は生まれているのよ。変でしょう?それなのに、まだ雪は"茶道"だなんて。」
ちゃんと結菜の話も聞いてはいたが、俺は結菜の質問が急でびっくりしてしまい、そっちの方に気を取られていた。
「あ、あぁ。」
俺は曖昧な返事をした。結菜は俺の言葉を聞いたかわからないような表情をしていた。
「私ね・・・雪が3つの時。語学留学で、イギリスに行ったの。その時、水無月皓と出会った。そして、結加を孕んでしまった・・・。」
結菜は隔離施設を見ていた瞳を下にとんと落として、また喋り続けた。
「語学留学は中断。だけど、日本に帰るわけには行かない。だって、好秋にばれたくない・・・。だから、私はドイツで結加を産んだわ・・・」
結菜はしゃがみ込んだ。地面に咲いている名前も知らない紫の花を突付く。
「皓は、私は何も悪くない、って言った。私もその言葉に甘えた。まだ名前もついていない結加を皓に渡して・・・そして雪が5歳の時、そうね、"はーくん"と出会った時かな・・・まぁ、その頃。日本に戻ってきた。」
結菜はさっきから突付いていた紫の花を毟り取った。
「戻ってきてから、私は狂ったように毎晩、好秋と愛し合った。そして、私にとっては3人目の子供を孕んだ・・・。それが、月(つき)よ。って月の存在は知ってるわよね?」
その紫の花を丸めながら結菜は俺の顔を見た。俺の心臓が、またばっくんばくんと波打ちだした。
「あ、あぁ。弟が2人・・・だろ?離婚前は・・・。」
「そう。そして月を産んで3年後・・・雪が8歳の時、花(はな)(※男)を産んだ。そして私たち茶道一家は幸せに暮らすはずだった。」
結菜はぐちゃぐちゃに丸まって、白と紫と緑が混ざり混ざったような感じになってしまったそれを、適当に投げた。
「雪が12歳の時、水無月皓が乗り込んできた。結加を連れて。そして、全てを好秋に説明したのよ、あいつは・・・。それを聞いた好秋は、もう私とは一緒にいられない、とそう言って・・・離婚届に名前を書いて印鑑を押して、月と花を連れて家を出て行ったの。」
そして花を毟り取られた茎と葉を結菜は立ち上がり、爪先で踏んだ。
「私も、家を出た。離婚届を出した。そして水無月皓と結婚して、水無月結菜になった。だけど、家にいざ行ってみれば、浩と梅乃と私と皓の4人と雪、結加の計6人で暮らす事になった・・・。」
「ちょっと待て。」
さっきまで紫の花が生えていた場所に爪先で穴を掘っている結菜に向かって俺は言った。
「結菜、一体いつ『VAIO』に感染したんだ?」
「『VAIO』に感染したのは、水無月皓にあったすぐだと思うわ。・・・あいつの研究所に入れてもらって・・・変な肌色の塊を私は触らされたもの。それは私の体に・・・スライムみたいにくっついて、そして消えてしまった。"何?"って訊いても、あいつは答えてくれなかった。今思えば、アレが・・・『VAIO』だった・・・。」
結菜は首を振った。
「そんなこと、今はどうでもいいのよ。えぇっとどこまで話したんだっけ?」
「皓達と6人で暮らすことになったところまでだ。」
「あぁ、そうだったわね。そして、それから・・・あの2人は『VAIO』の研究を続けながら・・・生活していったの。生活資金は浩が開業医を開いていたのと、皓の博打。私たちは6人で生活していた・・・。でも、10年前、大きな変化があったわ。」
結菜はさっき掘ったところから出た土を、また戻していた。
「『VAIO』の成功作品が出来上がったの。私が感染したような生半可なものじゃない。脅威の回復スピード。そして・・・猛毒。大成功だったわ。」
「猛毒がか?」
「それが皓の狙いだったもの。」
「?」
「皓は・・・全世界の破滅を願っていた・・・」
結加は大きな溜息をついた。
「なん・・・」
「そう。とにかくそれで、『VAIO』が完成した・・・。だけど、完成した『VAIO』に、皓と浩が感染してしまった。」
俺の言葉を遮って結菜は続きを喋りだした。
「・・・梅乃が、死んだ。雪と結加は丁度学校でいなかった。そして私はそのとき自分の異常に気がついた。年があれから取っていないことも、そのとき気がついた。そして、『VAIO』のその素晴らしい出来に、浮かれた皓は次の日に出かけて行った・・・。あ、もちろん自分で作った毒遮断服を着てたけどね?」
「毒遮断服?」
「えぇ。『VAIO』の特性を知っている皓や浩じゃなきゃ作れない特性のね。毒を空気中に発散させないの。」
結菜はひょいと肩を竦めた。
「・・・それで、初めてかもしれないけど・・・私と浩が2人っきりになった。その時、浩との間に出来たのが、結希。」
びっくりした。
ただ、"梅乃"が死んで悲しい、という話が来るのかと思っていたら・・・飛んだ誤算だった。
結菜はひょいと肩を竦めた。
「私が結希を好きなわけ、わかった?」
俺は無言で頷いた。
あまりのショックに口も開けなかった。
何だ、そりゃ?
じゃあ、雪も結加も結希も。
3人とも、父親が違うのか?
有り得ない・・・。こんなの、姉妹といえるのか・・・。
「あ、ちなみに浩は今いないよ?皓に殺されちゃったから。」
何を思ったのか、結菜は急にそんなことを言い出した。
俺はもう何もいえなくなった。
「っと、話がずれちゃったわね〜。で、鷹多悠・・・あなたは、『VAIO』を滅亡させる気が、あるの?」
俺は下唇を噛んだ。
結菜は静かに溜息を吐いた。
「あなたねー・・・黙秘権なんて、無いのよ?ぐずぐずしてたら皓が動き出すわ。・・・アメリカにだって『VAIO』を送るのに成功したみたいだし。」
「ッ・・・それ、皓がやったのか!?」
「えぇ。他に誰がいるっていうのよ?」
結菜はひょいと肩を竦めた。
「アメリカ地区が、今一番権力持ってるでしょう?そこを抑えたかったみたい・・・。だけど、世界政府が存在を発見して、たった独りで船に今は乗ってるらしいわよ。ま、アメリカ地区から隔離施設のある日本地区まで船でたった独りで来るなんてこと・・・できるわけないけどね。つまり、見殺し。」
結菜は悲しそうな笑顔を浮かべた。
「でも、そうでもしないと『VAIO』はなくならないこと、世界政府はわかってんの。阿呆な政府どもでさえもわかってるのに、鷹多悠・・・あんたがわかんなくてどうするのよ。」
結菜の語気が荒くなってきた。
「いい加減にしよ?たかが6,7000の人間の命で、世界全部の人口が助かるんだよ?あんたの一声で。あんたがちゃんとやれば、『VAIO』感染者は増えなかったかもしれないでしょ。もういい加減にしよ?」
だが、切れることも無く、あくまで諭すように結菜は語りかけてきた。
「俺は・・・」
今まで喋り続けていた結菜に変わって俺が口を開こうとすると結菜は止まった。
「俺は、ずっと『VAIO』が憎かった・・・。雪を殺した『VAIO』が・・・。だから、俺はあのやり方以外の方法で・・・『VAIO』を1人殺した・・・。」
結菜が身を乗り出した。
「嘘!他にも方法があるっていうの!?」
俺は頷いた。






コメント:
2003.03.27.UP☆★☆
結菜の過去新事実発覚。?
と、いうより、この辺の話は切れ所が無くて困ってます。(苦笑)
…気になるところで切ってますけど。(ぉぃ)
何かだんだんこんがらがってきました。(^^;)
…理解できない〜!!!(ぉぃ)




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